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作 例

​​プロのペダル・デザイナーたちによる作例集。オリジナル・ペダルからNu:Tekt OD-KITモディファイまで、解説はもちろん、回路図や実体配線図も公開しています。

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今回は「Nutubeがどういう音がするものなのか」という興味から、2回路入っているうちの1回路を使ってシンプルなブースターを試作してみました。


まず音を出してみて「真空管だなあ!」と思いました。それもなんというかエフェクターに無理に積んで潰れすぎたり不自然に暖かすぎたりという感じではなくて、良い意味で普通の音というか、スッと出てツヤがある、アタックもプリッとする。そして歪ませていってもスムースで、 こんなデバイスが登場して、しかも部品として入手できるようになったなんて素晴らしすぎます。自作にあたっては真空管ということで身構えてしまうかもしれないですが、結構感覚的に軽く使っていけるような気がします。なんといっても用意する電源の容易さや、発熱が少ない点など今までの真空管の比ではなくお手軽ですから、自分も色々なところに積極的に取り入れていきたいです。


KORGさん公式の使用ガイドのページがとても丁寧なので、なぞっていけば普通に使えると思います。唯一心配なのがマイクロフォニックノイズでしたが、これも公式ガイドにならってクッションでの対策を実験してみました。

実際に試してみると案ずるより産むが易しで、対策さえきちんとすれば問題を感じることはありませんでした。あと、フィラメントの定格を超えてしまうと壊れてしまうので、ここは公式にならった方がよさそうです。
自分の場合は少し下げ目の音がより好みでしたが、それはまた違う機会に試してみたいです。

​回路図

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実体配線図

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エンドウ.

どーもエンドウ.です。ギターアンプやエフェクター関連に頻繁に利用される真空管といえば12AX7という双三極管があります。恐らくギター界では圧倒的な登場率の同真空管ですが、Nutubeをそれに置き換えてそのまま真空管ギターアンプのプリアンプ部分をエフェクターにしてしまおうと考えました。まずは本機の電源電圧を決めます。これは真空管アンプを設計する際の基本的なコツのひとつでもあります。Nutubeは9Vでも十分設計可能なようですが、増幅回路部分の電源が9Vだと増幅率を稼ぐのがやや面倒になります。交流18Vのアダプタを整流して30V近い電源を作ると増幅回路は楽ですが、電源部に整流回路を作らなくてはいけないのでそれも却下。そこで手元にあった直流12Vアダプタ(Maxonのセンタープラス200mA)を使い、増幅回路用の電圧、フィラメント電圧、バイアス電圧の全てをこれで賄うことにしました。ちなみに秋葉原で6~700円で売っているスイッチング式の直流12Vの小さなアダプタは、きちんとしたリプル除去回路を追加しないと高周波ノイズが酷くて使い物になりませんでした(本機はできる限り部品点数を減らしていますので、逆電圧防止機構など用意されておりません。ですので絶対センタープラス12Vのアダプタ以外使用しないでください)。電源電圧を決めたら次はヒーター回路です。Nutubeではフィラメントと呼ぶようですね。フィラメントの点灯方式は電圧のばらつきを抑えるために全部を並列接続としました。消費電流量が多くなってしまいますが止むを得ません。その分抵抗が1つで済みます。ちなみにNutubeの場合、緑色に光っている部分はフィラメントではなくアノードだそうです。全部直列では緑色に光らないアノードが出てきますのでやめた方が良いです。フィラメント電圧は0.3Vでもアノード点灯しましたが音は出ません。大体0.5V以上の電圧が無いとダメでした。本機は0.66Vくらいで動かしています。

 

もうひとつフィラメントの注意点ですが、フィラメント回路(通常の真空管ならばヒーター回路)だけを組み上げてもアノードは光りません。通常の真空管でしたら、まずはヒーター回路が完成したら点灯チェックを行い真空管が光るのを確認するのですが、Nutubeは光りません。アノード、グリッド、フィラメントすべての周囲に回路を形成してみると(アノード抵抗、グリッド抵抗)、ようやくアノードが緑色に光ります。フィラメント回路だけ組み上げて「光らない!Nutube壊れてる!」と早とちりしないようにしましょう。従来の真空管回路設計に慣れてしまっている人は要注意ですね。

次に増幅回路の設計です。ギターアンプのプリアンプ部を模すということで、半導体などでは増幅させず、Nutubeだけで直列4段増幅させる事にしました。通常のビンテージ真空管アンプはハイゲインタイプでも3段増幅がほとんどですが、12Vですとそこまでの増幅率を見込めないため増幅段を増やし4段としました。

通常の真空管回路設計ですと、データシートにある動作曲線にロードラインという線を引いて動作点を決めて設計するのですが、Nutubeのデータシートには特定の電圧とアノード抵抗値による増幅率(ゲイン、db)が載っているので、それに合わせてみました。

 

グリッドバイアスが2~3Vの時、12V電源の場合、アノード抵抗を330kにすれば14db(5倍)の増幅率となると書いてあり、またグラフを見れば12V電源の時に2Vのグリッドバイアスでは若干曲線の下部が寝ているので、なんとなく3Vくらいのグリッドバイアスを目指すことにします。またグリッド抵抗での電圧降下分を考慮して、バイアス電源は3.5Vくらいになるようにします。

電源電圧12Vはアダプタの電源をそのまま使いますので、バイアス電源3.5Vを作ります。データシートには「個体差を半固定抵抗などで微調整。一番ゲインが大きく取れる位置にバイアス電圧を設定する」とありますが、回路が面倒になるので無視しました。よって12Vを分圧して固定のバイアス3.5Vを作ることにします。実測ではバイアス電圧3.35Vになりました。大雑把ですが大丈夫でしょう。

あとは基本的な増幅回路を連結して、細かい音のデザインをしていくだけですが、ここで大きな問題に直面しました。Nutubeは増幅段をそのまま直列につないでいくとどんどんゲインが下がり、最後は音が消え去ってしまうのです。データシート上でも、入力段と出力段にFETによるバッファを奨励していますね。これはもうNutubeの内部抵抗だとかインピーダンスに関わる宿命ですので泣く泣く段間にFETバッファを入れます。まあ信号増幅はNutubeだけで行っているので良しとしましょう。せっかくの新世代真空管ですので、ビンテージギターアンプ的に半導体部品は使わないで作りたかったのですが残念。

 

新世代真空管ですが、従来の双三極真空管とは扱いが全く異なります。各段間にバッファが必要なこともそうですし、何しろ防熱管ではなく直熱管なので色々と設計が面倒です。フィラメントもかなりデリケートで、実はうっかりフィラメントに12V電圧が触れてしまい、高価なNutubeを3つも焼き切ってしまいました(KORG様すみません)。念のため1V以上の電圧はかけないように心がけましょう。そして極めつけはマイクロフォニックノイズ(電極に振動が伝わることによって発生するノイズ)です。尋常じゃないくらいキンキン言います。このあたりの振動対策はNutubeサイトに掲載されていますので、徹底的に実践することをお勧めします。本機は対策が甘いので、振動するとすぐにキーンキーンと鋭いノイズが発生します。

 

そんなNutubeですが、丁寧に設計すればとても素晴らしい音を出してくれます。さすが真空管ですね。全く同じ動作条件での検証はしていませんが、Nutubeはしっかり真空管の音がすると思います。それと本機は演奏に応じて緑色のの光が明滅します。そこがまた良い雰囲気。

​回路図

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実体配線図

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Nutube Ring Modulator

僕が今回作ったリング・モジュレーターの構成をざっくりと乱暴に紹介しますね。まず前段でMOSFETを使ったブースターでゲインを調整して、Nutubeをブーストさせます。次にその音をリング・モジュレーター回路に突っ込むという、実に簡単な仕組みになっています。リング・モジュレーターの回路には色々な種類があるのですが、今回はこの回路を参考にする稀有な人がいないとも限らないので、応用を利かせやすいFETスタイルのフォトカプラーを使用してみました。といいつつも、国内にあるパーツ・ショップではFETスタイルものをあまり見かけないので、もしかしたら入手しづらいかもしれません。でも、その場合は一般的なフォト・トランジスタで応用できると思いますので安心してくだい。今回は、このフォトカプラーをオシレーターでAM変調させてリング・モジュレーターにしています。

ちなみに、開発の初期段階では完成したものとは逆の構成になっていたんですよ。最初は、リング・モジュレーターの音をNutubeで歪ませる仕組みにしようと考えていたんです。でも、それだとリング・モジュレーターをチューブ・アンプで鳴らすのと同じことですよね(泣)。せっかく足下に真空管サウンドが用意できるのであれば、前段にNutubeを持ってきた方が聴いたことのない音になるんじゃないかなと思って、このような構成に落ち着いたんです。


とはいうものの、完成したモデルを色々と試してみると、Nutubeを後段に持ってくるやり方が一番使い勝手が良い気もしてきました……。その辺りの検証はみなさんにお任せいたします。もし気になった方がいたら、ぜひ作ってみてください!

​回路図

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今回Nu:Tektのモディファイをさせていただくにあたり、まずはキットをクリーンとディストーションの2パターンで素組みしてみて、どのようなキットであり、どのようなサウンドであるのかを理解するところから始めました。

 

感想としては、Nutubeの質感がとても良くわかるキットであり、Nutubeを使用していないエフェクターとのサウンドの違いがはっきりしている!という印象を受けました。説明書もとても丁寧で、パーツも多すぎず、気軽に作れるキットに仕上がっている点に感動しました。

 

気になった点を挙げるとすると、SHAPEノブのわかりやすさでしょうか。倍音感、歪みの質感を変更できるのは嬉しいですが、ペダルが売りとしているサウンドや方向性が利用者からするとわかりにくくなってしまう印象を受けました。このペダルを「製品」としてとらえると、内部トリマでも良いのかもと感じました。

 

続いてモディファイの内容についてですが、このキットの良さである「Nutubeらしいサウンド」は活かしたままモディファイをしたいなと思い取り掛かりました。テーマはディストーション。

キットのディストーション用定数をベースにしつつ、まずは単純にゲイン量を上げる定数変更を行い、そこから質感や高域・低域のバランスの調整を行なっていきました。定数の変更に加えて、ピンポイントでパーツの素材やメーカーの持つキャラクターを活かした音質調整を行っています。 例えば、Nutubeに供給する電源部のコンデンサ(回路図C20)については容量はキットのオリジナル値から変えていませんが、耐圧を16Vから50Vに変更しています。これは、低域の量感を調整する目的で変更しており、信号ラインのコンデンサでの調整とはまた違った効果があります。

また、Bottomノブを追加しています。キットの低域が少し寂しいように感じたので、クローズドバックのキャビネットで低域をズンズン響かせたようなサウンドが、クローズドバックではないアンプやラインでも再現できるようにしました。Bottomを絞るとタイトなサウンドも出せますので、実用的な4ノブになったのではないかと思います。

 

音の迫力、立体感が引き立つようモディファイをしましたので、ブラックバイソンの如く、攻めたアグレッシブなギタープレイをする方に使っていただきたいです!

​回路図

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今回KORG社から出ているNu:Tekt OD-KITをKarDiaNでモディファイさせていただきました。まず感じたのが「とてもクリエイティブなキットだ」という点です。通常のエフェクターキットは私の中ではプラモデルやパズルに近い感覚で作った経験がありますが、こちらはまず目に飛び込んでくる明解な回路図、そして3種類の製品方向性を自分で選べるという点に驚きました。これによって私の脳裏に浮かんだのは、Nutubeにおけるクリーン、オーバードライブ、ディストーションを色付けるポイントが、どのセクションによって影響するのかを数値で把握できるということです。これはとても大切なことで、こういったNutubeのような新しい素子は、Web記事や文献等のデータがまだまだ少なく試行錯誤に時間がかかります。しかしこのように3種類の音色に対して具体的な回路変更箇所が示されていると、Nutubeの理解がとても早くなります。例えばローゲイン使用時はクリーンの音色を基準に、ゲインを上げた際の歪みの質感はディストーションにしよう、といったことも容易に回路変更が可能ということです。そして私は今回ディストーションモデルを元に、ベース向けディストーションのモディファイを施しました。

 

作成するにあたって決めていた方向性は、ベースのローは原音のような肉厚のある生々しいサウンドを残す、しかし歪みの質感はNutubeが持つファズにも似たセンシティブな歪みを持たせるということでした。そこでまず考えたのがクリーンに対してプリアンプ回路を作成し、それをNutubeセクションとミックスするということでした。ベース用の歪みではよく行われる手法ですね。そして私はそこにNutube側でローの処理を避けるということを行いました。これはNutubeをゲインアップした際にロー側の歪みの質感が私の好みではない、少しピークが平たくなってしまう音色になるからです。そこでNutubeの増幅セクションへ入る前にハイパスフィルタを施しました。しかし、ただそれだけだとローミッドの旨味成分も一緒に削れてしまうこともあり、肩特性を上手く使わねばなりません。そこで別のセクションで少しローミッド付近にボトム感を出せることにしました。これによりベースの歪みが美味しい帯域に、しっかりNutubeの特性を与えることができます。またNutubeの負荷抵抗をつかさどるSHARPノブの動きが面白く、またこちらが与えるコンプレッションの変化をBASS向けペダルで活かすためにも、オープン状態と負荷状態の二択が行えるようにトグルスイッチを追加した点もモディファイポイントの一つですね。

今回ギター用のペダルをベース向けにアレンジするというモディファイを行いましたが、総じて感じたはこのOD-KITが持つ懐の深さです。仕事で色々なペダルを触ることや、アーティストからモディファイ依頼を受けることがありますが、それらペダルはある意味で鋭利に研ぎ澄まされた、手を入れる箇所に工夫が要るものが当たり前です。そんな中、OD-KITはまるで球のような素直で、そして歴史を作ってきたペダルの始祖達が持つ安定感もOD-KITのサウンドから感じられました。Nutubeペダルの基本としての音色の素晴らしさを持ちながらも、ユーザーのクリエイティブさをしっかり受け止め、様々なサウンドへ自分色に染めることも可能。とてもモディファイが楽しいペダルでした。

■良かった点

・標準でマイクロフォニックノイズ対策がなされている点。
Nutubeに造詣がある方だとご存知だと思いますが、本物の真空管のように振動を拾いノイズとして吐き出すことがNutubeでも知られています。その対策をOD-KITは標準でなされていて、この点において「モディファイ(改良)を考慮してなくていい」ということがあります。ノイズはほとんどの場合において減らした方が完成の最適解に近づいていきます。これはとてもありがたいですね。


■悪かった点→アドバイス
・Nutubeのピン配列が少し特殊な点。
通常、回路のテスト等を行う際にブレッドボードと呼ばれる機器を使いますが、こちらはピンの差し口の幅が2.54mmピッチなのですが、Nutubeは少し特殊な幅になっています。このままの状態だと挿すことができないため、テストを行う際も実際の基板に入れた状態での作業となり、何かと制限されてしまうことが難点でした。

そこで私はピンコネクタ側を追加で購入しそこからワイヤー端子に変換する小道具を作りました。これで付属のOD-KITをそのままブレッドボードで使うことが可能です。※1.5mmピッチの8ピンコネクタで探せば見つかると思います。

​回路図

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